バンガード 米国コミュニケーションセクターETF(VOX)の考察

ほえほえ^~、どうも、ほえタコです。

今回考察するのは、バンガード 米国コミュニケーションサービス セクターETF(VOX)です。

あれっ?と思われた方もいるかもしれません。そう、VOXは元々「バンガード 米国電気通信サービス セクターETF」という名称でした。

しかし2018年にS&Pのセクター再編が行われ「電気通信セクター」が無くなる代わりに「コミュニケーションサービスセクター」が新設されました。

その際にステート・ストリート社が「コミュニケーションサービスセレクトSPDR(XLC) 」を新規設定した一方で、バンガード社はすでにあった電気通信セクターETFをコミュニケーションサービスセクターETFに変更する選択を取っています。

そのため、これまで電気通信セクターETFであったVOXは、セクター変更により構成銘柄が大幅に変わることとなりました。

かつてのVOXの構成上位10銘柄(電気通信セクター時代)

ティッカー 銘柄名 保有比率(%)
T AT&T 23.4
VZ ベライゾン コミュニケーションズ 23.1
LVLT レベル・スリー・コミュニケーションズ 4.5
TMUS Tモバイル US 4.4
CTL センチュリーリンク 3.3
ZAYO ザヨ・グループ・ホールディングス 2.9
S スプリント 2.9
SHEN シェナンドー・テレコミュニケーションズ 2.4
VG ボネージ・ホールディングス 2.4
CCOI コジェント・コミュニケーションズ・ホールディングス 2.4

表は2017年9月時点、まだVOXが電気通信セクターETFであった頃の構成上位10銘柄です。

アメリカ最大手の電話会社であるAT&T(T)と大手電気通信事業者であるベライゾン コミュニケーションズ(VZ)のたった2社で構成割合のおよそ半分を占めています。ETFと呼ぶにはものすごく構成比率が偏っていますが、時価総額加重平均なので仕方がありません。

AT&Tやベライゾンはいずれも高配当の大型通信株ですから、当ETFの分配金利回りも当時は 3.9%程度と非常に高いものでした。

それが今回のセクター変更によって次のように生まれ変わりました。

新しくなったVOXの構成上位10銘柄(コミュニケーションセクター時代)

ティッカー 銘柄名 保有比率(%)
GOOG アルファベット 21.0
FB フェイスブック 13.5
T AT&T 7.8
CMCSA コムキャスト 5.1
VZ ベライゾン コミュニケーションズ 5.0
DIS ウォルト ディズニー 4.9
NFLX ネットフリックス 4.0
FOX 21世紀フォックス 2.9
CHTR チャーター コミュニケーションズ 2.4
ATVID アクティビジョン・ブリザード 2.1

表は2018年10月末時点のデーターです。コミュニケーションサービスセクターETFとなったVOXの構成上位10銘柄です。なお、議決権有りのクラスA・B株と議決権無しのクラスC株を合算した上での構成比率となります。

もはやかつてのVOXとはまったく別物のETFになっていますね。

TとVZの構成比率が激減したことにより、当ETFの分配金利回りは大幅に下がるであろうことは容易に予測できます。

なお、ここまで構成銘柄が変わってしまうと、VOXの過去チャートを用いて分析することはもはや無意味です。なのでここでは、VOXの構成上位10銘柄をざっくりと紹介します。

構成上位銘柄を眺めてみると「コミュニケーションサービスセクターとは何ぞや?」の答えが一応は見えてきます。

Web広告の巨塔、グーグルとフェイスブック

構成比率第一位のGOOG(アルファベット)は天下の検索エンジンGoogleの会社で、広告事業からの収益がメインですね。このブログも含め、いまやどこのサイトにもGoogle AdSenseの広告バナーが貼られています。また検索エンジンで情報を調べるときには、検索上位にスポンサード広告のリンクが置かれています。(広告だと知らない人が案外多いですけどね)

こうして私がブログを書いたり、あるいはブログを読んだりするのはインターネットが普及した時代の人と人とのコミュニケーションの一形態であり、このライフスタイルが変わらない限り、Googleは永続的に広告収入を稼ぎ続けるでしょう。

もっとも、広告事業は不景気の影響を受けやすい弱点があり、不況時にはそれなりに弱くなりそうです。

第二位のFB(フェイスブック)はSNS最大手で、これこそいかにもなコミュニケーションサービスですね。Facebookも収益の8割以上が広告事業によるものです。GoogleやFacebookはかつては「情報技術セクター」に属していましたが、収益モデルを考えるとたしかにコミュニケーションセクターに移った方が自然かもしれませんね。

ただ、GoogleやFacebookへの投資を目的としてVGT(バンガード 米国情報技術セクター ETF)を買っていた人は、今頃困っていると思います。

青:FB(フェイスブック)赤:GOOG(アルファベット)黃:S&P500

市場平均との比較チャートです。フェイスブックやグーグルが市場平均を大きくアウトパフォームしているのは当然と言えます。

ただ、フェイスブックの株価は2018年に最高値をつけてから急落しており、成長は頭打ちではないかと心配されています。大規模な個人情報流出スキャンダルがイメージ戦略的にも足を引っ張っています。

ディフェンシブ?な通信株、AT&T、ベライゾン、コムキャスト

第三位、第五位のT(AT&T)VZ(ベライゾン コミュニケーションズ)は大型通信株ですから高配当かつディフェンシブな銘柄で、不況にはそこそこ耐性があるだろうと考えられます。電話通信というのは私達にとって生活必需品であり、公益インフラに近いものですからね。

ただ、AT&Tやベライゾンは固定電話や携帯電話だけでなく、インターネットやケーブルテレビの通信事業もやっています。ベライゾンは米Yahooを買収してネット広告に参入していますし、AT&Tはタイム・ワーナーを買収して動画配信メディア事業に参入しています。ビジネスとしてやっていることは広いです。

第四位のCMCSA(コムキャスト)は米国最大手のケーブルテレビ運営会社です。アメリカ人はテレビ視聴がライフスタイルと根付いており、不況時だからといって生活必需品に近いケーブル回線を解約することはない。ゆえにコムキャストはディフェンシブ性が高い銘柄である。といった話は聞いたことがあります。

とはいえインターネットによる動画ストリーミング配信サービスが爆発的な広がりを見せる現在では、ケーブルテレビ会社も胡座をかいてはいられない状況です。

青:CMCSA(コムキャスト)赤:VZ(ベライゾン)黃:T(AT&T)/緑:S&P500

コムキャストはボラが高いものの過去5年間では一応、市場平均に勝っています。

ベライゾンやAT&Tは配当金再投資込みのパフォーマンスでも市場平均には負けています。

ちなみにチャートには入れられませんでしたが、保有率第九位のCHTR(チャーター コミュニケーションズ)も携帯電話・ケーブルテレビ・インターネットの通信事業者です。

エンタメはコミュニケーション? 競争激しいメディア業界

第七位のNFLX(ネットフリックス)のようなインターネット動画見放題サービスの躍進はケーブルテレビの需要を奪う脅威であり、その点でネットフリックスとコムキャストは競合関係にあります。ただ両者は事業提携で協力し合っている部分もあり、なんだかんだwin-winでうまくやっていくような気もします。

ネットフリックスのようなメディアエンタメ企業が一般消費財セクターから当セクターに移されたのは謎ですが、「家族団らんでTV番組を見るのもコミュニケーションのひとつ」みたいな発想でしょうかね。私はいつもひとりで深夜アニメを見ています。

余談ですがコムキャストはテーマパーク事業もやっています。大阪最大のテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)もコムキャストに買収されました。

テーマパークと言えばディズニーランド。ディズニーランドといえば構成第六位のDIS(ウォルト ディズニー)ですね。収益源としてはディズニーランド等のテーマパーク事業からの売上が大きいですが、それ以上にメディア事業からの収入が大きいです。つまりはディズニー・チャンネル等の視聴料金ですね。

第八位のFOX(21世紀フォックス)は映画会社・映画スタジオの大手企業です。ただFOXの映画事業・テレビ事業・エンタメ事業等はウォルト ディズニーに買収されることが決まり、業界に衝撃を与えました。買収劇ではウォルト ディズニーとコムキャストが対立していましたが、最終的にはコムキャストが折れた形です。

青:NFLX(ネットフリックス)赤:DIS(ウォルト ディズニー)黃:FOX(21世紀フォックス)緑:S&P500

急成長のネットフリックスが入っているためとんでもないチャートになっていますね。

正直なところ、DIS・FOX・NFLX・CMCSA・T・VZのいずれにしても買収したりされたり事業提携したり競合敵対したりと何かとややこしい関係で、個別株投資するには難しいところがあります。

フォックス買収劇のニュースが飛び交ったときに、個人投資家は喜んだら良いやら悲しんだら良いやら判断に悩んでしまいます。

これらのエンタメ事業周りにまとめて投資できるVOX(バンガード 米国コミュニケーションサービス セクターETF)の活用意義があるとすれば、まさにその点だと思います。

ゲームソフトの会社がコミュニケーションセクターに入る理由

最後に、VOX構成比率第十位のATVID(アクティビジョン・ブリザード)は世界第三位のゲームソフトウェアの会社です。日本だと「クラッシュ・バンディクー・シリーズ」が有名でしょうか。

なんでゲームソフトの会社がコミュニケーションセクターに入っているのか不思議です。

調べたところアクティビジョンは2015年にアクティビジョン・ブリザード・スタジオというテレビ番組・映画製作事業の会社を立ち上げており、制作番組はネットフリックスで配信されているようですね。また、ディズニーとビデオゲームを共同制作したりもしているみたいです。

また、アクティビジョン・ブリザードは「Netflixが動画のストリーミング配信サービスで成功したように、ゲームのストリーミング配信サービスがあっても良い」ということで《ストリーミングビデオゲーム》という新たなビジネスを始めるそうで、そういう意味ではたしかにNetflixが入っているならアクティビジョン・ブリザードも入るのかなといった感じです。

それでようやく見えてきたのですが、コミュニケーション・サービスセクターとは言ってみれば《インターネット × エンターテインメント》事業なんですね。

もっと幅広く取るなら、《通信 × メディア × エンターテインメント》がすなわち人類にとってのコミュニケーションであるということでしょう。

日本でも通信キャリアのドコモが「dアニメストア」でアニメ専門のストリーミング動画配信サービスを立ち上げたり、auが「ビデオパス」という動画配信サービスを始めたりしています。

既存の通信事業者やメディア事業者、あるいはゲームソフトの会社は、インターネットの普及に伴いビジネスモデルの転換を余儀なくされています。

その未来に訪れる、新しい通信、新しいメディア、新しいエンターテインメントに関連する企業群を「コミュニケーション・サービス」として一緒くたにまとめるのが、たぶんこのセクターの存在役割なのだろうと感じます。

青:ATVID(アクティビジョン・ブリザード)赤:CHTR(チャーター コミュニケーションズ)黃:S&P500

VOXの上位10銘柄を見てみると、市場平均を大きくアウトパフォームしている銘柄が多いです。それは今までが、ネットメディア事業の急成長期であったためです。

これからもネットメディアは人々の娯楽の中心を占めるでしょうが、企業がこれからも高成長を続けていけるかは未知数です。

ほえタコは「バンガード 米国コミュニケーションサービス セクターETF(VOX)」への投資予定はありませんが、セクター投資として非常に面白い、ユニークな投資対象であると感じます。

ネットインフラ、ネットメディア、ネットエンタメを担う企業に投資したい人には良いETFだと思います。

VOXはまだ証券会社の銘柄情報が更新されていないため、より詳しい銘柄情報が知りたい方は下のバンガード社の公式ページを見てください。

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ちなみに経費率は今のところ 0.10% のままで変わりません。

それでは明日も頑張っていきましょう。たこたこ^~

 

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この記事を書いた人

豆腐メンタル投資家。株式投資歴9年。
iDeCo&つみたてNISAでの全世界株投資を主軸に、趣味で米国株や日本株のリスク許容度最適化ポートフォリオを組む。
ツイッターは @HoeTako
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