たった50%の下落でSPXLを損切りした人が想定すべきだったリスク

ほえほえ^~どうも、ほえタコです。

ところで、SPXL(Direxion デイリーS&P500ブル3倍 ETF)というS&P500指数の3倍の値動きをするレバレッジETFがあり、一時期の米国株クラスタでは大変人気を集めていました。

「米国株市場はこれからも右肩上がりで成長していくのだから、同じ長期投資をするならばレバレッジをかけて高いリターンを取りに行こうぜ!」とSPXLへの長期投資を考える投資家が2018年にはちらほらと見受けられました。

昨日の記事(アンダーパフォームしているポートフォリオにこそ魅力を感じる)でも書きましたとおり「今までが右肩上がりだったから、今後も右肩上がりだろう」という考えは典型的な《外挿バイアス》であり、人間が陥りやすい幻想です。

とはいえ、SPXLへの長期投資自体はとても面白い戦略で、リスクを受け入れるならばやってみる価値は大いにあるとほえタコは考えています。

ここで問題となるのは「リスクを受け入れる」とは具体的にどういうことか、です。

たった50%の下落でSPXLを損切りした人たち

(※ SPXL -Yahoo Finance

2018年10月から12月にかけて、SPXLは高値から-50%近く下落しました。

2018年の年間リターンでは-25.13%となりました。

急落相場での値下がりに耐えられずSPXLを損切りしてしまった投資家が少なくなかったですが、長期投資が前提であるならば-50%程度では手放すべきではありませんでした。

少なくとも「過去の最大下落率」と「標準偏差」を確認した上でSPXLへの投資を決めていれば、2018年の相場でも慌てることはなかったでしょう。

1.過去の最大下落率を確認する

米国株・米国ETF投資にめちゃくちゃ役立つ無料ツールで「Portfolio Visualizer – Backtest Portfolio」なるものがあります。

ここでSPXL 100%のポートフォリオをバックテストすることで、過去のリターンやさまざまな指標を見ることができます。

Portfolio Visualizerによると、2009年1月~2018年12月におけるSPXLの最大下落率(Max. Drawdown)は-49.16%で、ドローダウンの期間は2011年5月~9月でした。そしてドローダウンの回復には2013年1月までかかりました。

2011年の単年リターンはS&P500が+1.87%とプラスであったのに対して、SPXLは-14.91%と大幅にアンダーパフォームしました。

この過去の事実だけからも、

「SPXLで莫大なリターンを得るためには、2011年に-49.16%の大暴落を食らい、その後1年3ヶ月間にわたり含み損に耐え、市場平均にアンダーパフォームすることを許容しなければならなかった」

ことがわかります。

ついでに言えばこれは2009年1月からのデータですから、あの最悪のリーマンショックを考慮していません。もしリーマンショック前からSPXLが設定されていたならば、最大下落率は-97%にまで達していました。

なんにせよ、-50%の下落で損切りするようでは、2011年の相場でも大負けしていた、ということです。

2.標準偏差を確認する

リスクを知る上で外せないのが標準偏差です。標準偏差ではリターンのばらつき具合がわかります。

例えばSPXLの標準偏差であれば、Morningstar社の銘柄分析ページ(Ratings & Risk)で確認することができます。

リンク先ページに『Volatility Measures』(ボラティリティ指標)という項目があります。

ここでは『Standard Deviation』(標準偏差)『Return』(平均リターン)の項目を使います。

10年前といえばちょうどリーマンショック後の底値付近で、期間的には投資タイミングがあまりにも良すぎるために、過去10年間におけるSPXLの年平均リターンは29.45%と驚異的な値となっていますね。

本来ならばもう少し想定リターンを割り引くべきかもしれませんが、目をつむります。

標準偏差の41.81という数字は、この平均リターンからどのくらいのばらつきが生じうるかの指標となります。S&P500の同期間の標準偏差は13.61ですから、SPXLがいかにハイリスクかがよくわかります。

そもそも標準偏差って何? どうやって計算してるの? という話については、ここで書くには長くなりすぎるため、おすすめのサイトを3つご紹介します。

上の3記事を読めば、標準偏差の概念はおおよそすっきり理解できます。素晴らしいサイトです。

結論だけ書くと、

±1標準偏差であれば、68.27%の確率でSPXLの年間リターンは -12.36%~ +71.26% の範囲内に収まります。※ -12.36% =(29.45 – 41.81)、+71.26% =(29.45 + 41.81)

±2標準偏差であれば、95.45%の確率でSPXLの年間リターンは -54.17%~ +113.07% の範囲内に収まります。※ -12.36% =(29.45 – 41.81×2)、+71.26% =(29.45 + 41.81×2)

つまりSPXLの標準偏差41.81が意味するのは「SPXLを1年間保有して、資産が2倍になったり逆に半分になったりすることは、確率としてはぜんぜんあり得る。想定の範囲内」といったところです。

先述のとおり過去10年間だとSPXLの投資タイミングが良すぎるがために平均リターンが高く見積もられてしまっており、実際はもう少しマイナスにブレるだろうとは思います。

レバレッジ投資ならなおさら損失を覚悟しておく

プロスペクト理論の損失回避性の概念が示すとおり、人間の心はとかく損失には弱いです。

100万円を得る喜びよりも、100万円を失う悲しみの方が倍は大きく、心を動かされてしまいます。

SPXLのようなハイリスク商品に投資する際は「どのくらいの下落は当然に想定され得るのだろうか」と考え、覚悟しておく必要があります。

最大下落率・標準偏差のいずれを見ても、SPXLは当然に-50%程度の下落は想定されることが読み取れます。

もっとも、この過去10年間のリターンから得られた標準偏差にはリーマンショックのような金融危機や長期的な下落相場が加味されていませんから(含み損が-70%、-90%になってもSPXLを保有し続けられるだろうか)と、より悲観的な想像を働かさなければ、長期保有は難しいかもしれません。

長期投資において一番重要なのは、投資家自身のメンタルです。リスクをよく知った上で、自身の心理的効用を最大化できる投資対象を選びたいものですね。

それでは明日も頑張っていきましょう。たこたこ^~