ほえほえ^~、どうも、ほえタコです。
最近投資家の間で大人気のレバレッジ系ETFに、SPXL(Direxion デイリーS&P500ブル3倍 ETF)やTECL(Direxionデイリーテック株ブル3倍ETF)があります。
結論から言ってしまうと、バックテストの結果を根拠に長期投資を決めた人は注意する必要があります。
設定来のパフォーマンスで、SPXLは+2,025.09%、TECLは+9,622.28% という圧倒的な騰落率を誇ります。
もし10年前にSPXLに100万円を投資していたならば今では2500万円くらいになっていますし、TECLであれば1億円達成まであと間近といったところでしょう。
しかし厄介なのが、この「設定来」の時期です。
SPXLのETF設定日が2008年11月5日、TECLの設定日が2008年12月17日。
すなわちバックテストの結果で得られるのは、リーマンショック底値付近からの極めて都合の良い時期のパフォーマンスに過ぎないということです。
実際、もしSPXLが2008年以前から存在した場合、2007~2009年のリーマンショック時に -96% 、2000年からのITバブル崩壊で -91% の最大損失が発生するシミュレーションとなっています。
リーマンショックやITバブル崩壊といった暴落相場だけでなく、減価特性のあるレバレッジETFはボックス相場に弱いということはよく知られた話です。
もちろん、SPXLやTECLへの「長期投資」を考えている人はこのボックス相場に弱いレバレッジETFの特性をよく理解しているとは思いますが、その減価の度合いを過小評価している可能性があります。
実例をいくつか見てみましょう。
- 青線:GDX(ヴァンエック ベクトル 金鉱株ETF)
- 赤線:NUGT(Direxion デイリー 金鉱株 ブル3倍 ETF)
過去10年間において金鉱株ETFであるGDXは半値近くに下落しましたが、TECLのようにレバレッジ3倍をかけていたNUGTは -99.78% のパフォーマンスとなっています。
つまり10年前に金鉱株のレバレッジETFに長期投資していれば、今は紙くず同然にまで価値が下落しています。
これを読んでいるあなたは、「金鉱株への長期投資なんて前提として馬鹿げている。情報技術セクターの成長性に賭けるTECLへの長期投資と一緒にしないでほしい」と怒っているかもしれません。
ひとつ付記しますと、2005年から2012年にかけて、金(ゴールド)の価格上昇率はS&P500のパフォーマンスを大幅にアウトパフォームしていました。
同様に金鉱株指数も2011年当時はS&P500の成績を上回っており、金鉱株への長期投資が有望であると考えていた投資家も少なくなかったということです。(まぁそこが天井でしたけれど……)
別のセクターも見てみましょう。
- 青線:XLE(エネルギーセレクトセクターSPDRファンド)
- 赤線:ERX(Direxionデイリーエネルギー株ブル3倍ETF)
過去10年間のエネルギーセクターは、S&P500のパフォーマンスには大きく見劣りするものの、それでも配当再投資込みならば+68%とプラスのパフォーマンスを叩き出しています。
一方、エネルギー株ブル3倍のほうは、-66% と大幅に減価されてしまっています。
ここでもやはり「エネルギー株への長期投資なんて前提として馬鹿げている。情報技術セクターの成長性に賭けるTECLへの長期投資と一緒にしないでほしい」と感じる人がいるかもしれません。
こちらも付記すると、1999年から2007年にかけてエネルギー株指数はS&P500を圧倒的にアウトパフォームしており、当時はエネルギーセクターへの長期投資が有望視されていたということです。数年後にシェールガス革命が起きるなど予見できていた投資家はほとんどいないでしょう。
情報技術セクターに全賭けするTECLへの投資がいかにハイリスクであるか、金鉱株とエネルギー株のレバETFの減価事例から見ても一目瞭然です。
では、セクターではなく、SPXLのように国の市場平均にレバレッジをかける場合はどうでしょうか。
- 青線:EEM(iシェアーズ MSCI エマージング ETF)
- 赤線:EDC(Direxion デイリー新興国株ブル3倍 ETF)
新興国株指数は過去10年間で+224%のパフォーマンスとなりましたが、新興国株レバ3倍のほうは+29%のパフォーマンスと指数に対して大幅に劣後しています。
ここでもレバレッジETFの減価特性がよく見て取れます。
えっ? 米国株は右肩上がりで成長しているので新興国株なんかと一緒にしないでほしい?
付記すると1999年から2007年にかけて新興国株は米国株に対して年利数十パーセントの違いが出るレベルで圧倒的にアウトパフォームしており、新興国株への長期投資は非常に有望視されていました。
とくに2003年から2007年にかけての新興国株の上昇トレンドは今のNASDAQにも負けずとも劣らないほど勢いが強く、この右肩上がりの成長はこれから先も続くと思われていました。
もっともこんな例を出さなくとも、シミュレーションでSPXLはリーマンショック時に -96%も減価します。そこから10年間で27倍に価格が上昇したとしても累計では+8%にしかならず、S&P500にふつうに負けています。
SPXLやTECLへの「長期投資」をする投資家に対して、彼らは論理的(ロジカル)で合理的であるといった印象を持っている方は少なくないかもしれません。
しかし私からすれば、レバレッジETFへの長期投資が何を論拠として論理的で合理的であるのか、かなり理解に苦しみます。
私には彼らが、たまたまパフォーマンスの良かった過去10年間の都合の良い期間、都合の良いセクターや国家のチャートを抜き出してきて「これから先も右肩上がりのチャートが続くだろう」という都合の良い観測に基づいてギャンブルをしているようにしか見えないです。
ツイッターにも呟きましたが
レバレッジETFは、セクターや企業の発展そのものではなく、「チャートが右肩上がりであること」に対して賭けているので、この前提が崩れればパフォーマンスが大きく毀損されます。
— ほえタコ (@HoeTako) January 23, 2020
これが結論ですね。
昨今のレバレッジETFのブームを憂慮しています。親しい友人や家族に私がSPXLやTECLを勧めることは絶対にありません。
それでは明日も頑張っていきましょう。たこたこ^~