スマートベータETFを他者にはおすすめできない理由(SPYD・HDV)

ほえほえ^~、どうも、スマートベータETF大好き投資家のほえタコです。

私は現在、HDV(iシェアーズコア米国高配当株ETF)SPYD(SPDRポートフォリオS&P500高配当株式ETF)といった高配当系のスマートベータETFをポートフォリオの主力としています。

また、将来的にはVIG(バンガード米国増配株式ETF)といった増配系スマートベータもポートフォリオに組み込む予定です。

つまり私自身はスマートベータ大好き人間なのですが、しかしながらこれらのスマートベータ系ETFを他者にもおすすめできるかというと、決してそれはできないと考えています。

というのも、スマートベータETFは「あるファクターに着目した《特殊な投資戦略》を一貫して継続する」ための投資マニア向け金融商品であり、長期的な成績が市場平均に勝つか負けるかはまったく未知数の実験的投資だからです。

「実験」「遊び」「エンターテイメント」として、市場平均に負ける未来をある程度許容できる人でなければ、スマートベータ系ETFをポートフォリオの大部分で持ち続けるのは案外難しいです。

ファクター投資の天敵はツイッター・ブログ・YouTubeである

スマートベータETFが実現するのは「ファクター投資」です。

高配当・連続増配・バリュー・グロース・クオリティ・モメンタム・低ボラティリティ・大型・中型・小型・自社株買い……etc + 均等荷重・配当荷重・修正時価総額荷重

上記のようなさまざまなファクター(要因)に着目してスクリーニングをかけ抽出された企業が、スマートベータETFの構成銘柄に組み込まれます。

ただこうして生み出された「偏った」投資戦略は、ある時期においては好調であるものの、ある時期においては不調となるため、ツイッター・ブログ・YouTubeの論客によって槍玉に挙げられやすいのです。

例えば最近では一部のインフルエンサーさんが

「SPYDはオールドエコノミー(笑)に思考停止無限ナンピンしている」

といったようなことを言ってSPYDホルダーをさんざんに馬鹿にして煽ってきています。

(緑:SPYD/青:S&P500 出典:https://www.etfreplay.com/combine.aspx

現実に直近1年間でSPYDはS&P500を -30.5% もアンダーパフォームしており、新型コロナショックを受け -46.38% とリーマンショック級の最大下落率を記録しました。

元よりSPYDは「S&P500企業のうち配当利回りの高い順に上位80銘柄を均等加重で投資する」戦略のスマートベータであり、その基準によって選び出される銘柄群は

  • S&P500企業のなかでも「財務が悪い」「成長性に乏しい」「売上高が減少傾向にある」などの理由で投資家から見放され、結果として高配当になっている企業
  • 金融・不動産・エネルギー・公益などの高配当になりやすいセクターの企業

が多くなります。

また、SPYDは時価総額加重ではなく均等加重のため、中型株のウエイトが大きくなります。

新型コロナによる経済ショックはまさに「非ハイテクで財務が弱く成長力も弱い中小企業&石油会社&ホテル商業系不動産」が狙い撃ちとなるような災厄ですから、この局面でSPYDがS&P500に大きく負けることは火を見るよりも明らかです。

加えて、SPYDの6ヶ月毎の銘柄入れ替えでは「均等加重方式」に則って銘柄入れ替え及びリバランスが行われますから、株価の上がった銘柄を減らして株価の下がった銘柄を買い増す《逆張り》をSPYDは実行することとなります。

この件をもってして、ツイッター・ブログ・YouTube上で「SPYDはオールドエコノミーに思考停止無限ナンピンだ!などといって批難する人が出てくるのも頷ける話です。

しかしSPYDは2015年10月に設立されたばかりの「若い」スマートベータであり、SPYDの投資戦略が将来にわたって報われるかどうか結果を出すには時期尚早です。

まだ実験の途中なのです。30年後くらいにならなければきっとそれは分からないでしょう。(無論、SPYDが30年以内に早期償還される可能性は大いにあります)

(青:米国中型バリュー/赤:米国市場平均 出典:Portfolio Visualizer

そもそも1972年~2020年までの長期軸で見れば、SPYDの投資する「中型株&バリュー株」ファクターは米国市場平均を大幅にアウトパフォームしてきた実績を持ちます。

そしてリーマンショック後の十数年はバリュー株&小型株が弱い時期が続いていることからもわかるとおり、特定のファクターが恒久的に市場平均に勝ち続けることはまず無いです

つまり、特定のファクター投資を実現するスマートベータETFは時期によって市場平均に勝ったり負けたりするわけですが、勝っているときは投資家からチヤホヤされ、負けているときは掌返しで煽られたり貶されたりします。

Web2.0時代では、この「チヤホヤ」や「煽り貶し」がツイッター等のSNS、ブログやYouTubeなどのメディアでまたたく間に拡散し(例えば現在では)「高配当株投資はダメだ。オワコンだ」みたいな世論が形成されますから、スマートベータ投資は精神的に続けづらいのです。

現時点ではスマートベータ戦略がうまく機能しているVIG(バンガード米国増配株式ETF)についても同様です。

「バックテストで市場平均に勝っているからVIGに投資する」みたいな考えはやや危うく、それは即ち「市場平均に負けたらVIGを売る」ことを意味します。

スマートベータではありませんが、最近流行りのQQQ(インベスコNASDAQ100)もある意味ではGAFAM+ハイテクグロースに賭けるファクター投資です。

「バックテストでS&P500に勝っているから」という理由でQQQに投資している人は、S&P500に負けた時点で投資根拠を失い、QQQを狼狽売りしてしまうことに繋がります。

長期投資をするのであれば、

ファクター投資は「実験」であり、30年後の未来のことは分からない。分からないから、市場平均に負ける期間があってもそれを持ち続け、その結果を自分は見届けるんだ。

という覚悟、あるいは信念のようなものが必要です。

あとHDVについてはスマートベータの戦略設計からして、そもそも市場平均に勝つとか負けるとかそういうことはあまり考えられていない気がします。

HDVはどちらかというと「債券ETFで年金代わりのインカムを作ろうと思っていたけれど、でも債券より株の方が長期的な期待リターンは高いと云うし、それなら高配当系の安心して持てるETFがいいなぁ」みたいな需要に応えるために作られたスマートベータだと思っています。

《安心して持てる》というわりにHDVはアグレッシブな逆張り傾向が強いのですが、ただスマートベータのコンセプトとして、HDVは市場平均に勝つ負ける云々よりも、債券ポートフォリオの置き換え的なポジションを狙っている気がしてなりません。

さておき話が長くなってしまいました。

結局のところ他者には何をおすすめすんねん!というツッコミを受けそうです。

強いて挙げるならば、VT(バンガード トータル ワールド ストックETF)eMAXIS Slim 全世界株式(投資信託)は多くの人におすすめできると考えています。

将来、グロース株が流行ろうが、バリュー株が見直されようが、小型株が流行ろうが、ヨーロッパ株が大復活を遂げようが、新興国株が大人気になろうが、VT(全世界株式)にはこれらの株式がすべて含まれているからです。

そして資本主義経済ひいては世界人類が発展し続ける限り期待リターンがプラスに働く「全世界株平均」への投資を馬鹿にしたり煽ったりする人はそうそう現れません。

インデックス投資よりも個別株のアクティブ投資の方が稼げるぜ!と言ってくる人はいるかもしれませんが……。

「グロース派 vs バリュー派」「ハイテク派 vs 高配当派」「米国株派 vs 新興国株派」のような、ネット上で日夜繰り広げられる争いから距離を置き、全世界株派(VT)は「くくく、愚かなる人類めがまた争っておるわ。全世界を掌握せし吾輩は高みの見物をさせてもらおうぞ。ふはははは」とできることを思えばVTへの投資は非常に精神的な安定感を持ち得ると思います。

資本主義世界に絶望でもしない限りVTを狼狽売りするようなシチュエーションはあまり思い浮かびませんし(第三次世界大戦とかは怖いですが……)VTを狼狽売りするレベルの局面ではVOOだろうがVWOだろうがHDVだろうが狼狽売りする人が続出するでしょう。

なんにせよVTは「どのような局面でも持ち続けやすい」のが最強の長所です。

以上、スマートベータETFは「実験」の側面が強くツイッターなどでの批難対象となりやすい尖った投資戦略であるため、私はスマートベータ大好きだけれど他者にはおすすめできないなという話でした。

それでは明日も頑張っていきましょう。たこたこ^~