米国高配当株ETF投資が「心理的に」有利である理由

ほえほえ^~、どうも、ほえタコです。

ほえタコは現在、ポートフォリオの100%を HDV(iシェアーズ・コア米国高配当株ETF)で運用しています。HDVは米国の優良高配当企業を集めたETFで、18年11月現在は分配利回りが3.50%もあります。

しかしながらこのような米国高配当株ETFに投資することは、必ずしも経済合理的な投資戦略ではありません。

なぜならば、米国株投資では配当金(分配金)にかかる「税金」が大きなネックとなるからです。

米国株式・米国ETFのインカムゲインに対しては、米国の所得税 10% が源泉徴収で差し引かれ、そこからさらに日本の所得税 20.315% が引かれます。

合計すると毎年の配当金に対して 28.2835% が税金で取られてしまうことになります。分配利回り3.50%のHDVであれば、運用資産額に対して毎年1%近くが税金によるマイナス影響を受ける計算となります。

日本株式であれば配当控除が使えますが、米国株式・米国ETFは配当控除が使えません。また、外国税額控除制度も何かと条件があり誰でも適用できるわけではないです。

したがって不都合な事実として私が認めなければいけないのは「米国高配当株ETF投資は税制的に不利だ」ということです。もし日本の金融所得課税が増税されるのであれば、ますます不利になります。

パフォーマンスが変わらないのであれば「無配のグロース株」に投資する方が、経済合理的です。

米国高配当株ETF投資はメンタルに優しい

私が税制上の不利を承知で米国高配当株ETF(HDV)に投資しているのには、理由があります。

それは米国高配当株ETF投資には「心理的優位性」があるからです。高配当株投資は心理的効用を最大化させやすい投資戦略です。

心理的優位性と経済的合理性は、しばしば――というよりしょっちゅう対立します。

というのも、人間という存在自体が経済的に不合理な特性を持って生まれてくるからです。

プロスペクト理論における「損失回避性」

人間には、とにかく損失を被ることを嫌って回避しようとする「損失回避性」と呼ばれる心理的特性があります。

先月(18年10月)はNASDAQ市場が大きく崩れた月でした。

このとき長期グロース株投資と称してアマゾン(AMZN)やエヌビディア(NVDA)に投資していた少なくない人たちが、突然の株価急落に怯えて底値で株を投げ売ってしまいました。

「グロース株に投資した当初は10年、20年スパンでの長期投資を考えていたはずなのに」です。

これは何故かというと、人間の心理がもともと損失を被ることに滅法弱い特性を持っているからです。

例えばギャンブルで「10万円を得したときの喜び」と「10万円を損したときの悔しさ」とでは、金額は同じでも後者の方がより大きく感じます。

損失の苦痛は、利得の喜びよりもおよそ 2.5倍 も大きく感じられます。

したがって当初の投資理念が何であれ、ふつうの人が暴落に耐えるのは並大抵のことではありません。

リーマンショック級の暴落が起これば、グロース株投資家に限らずインデックス投資家の多くが損失に耐えることができず、退場してしまいます。

さらに恐ろしい損失時の「リスク選好」特性

暴落して株を底値で投げ売る程度のことであれば、まだマシな方です。

なぜなら人間の心理には「損失時のリスク選好特性」というさらに恐ろしい性質があるからです。

人は不思議なことに、自分が利益を得たときはリスク回避型になるのに、自分が損失を被ったときにはリスク選好型になる性質があります。

つまり、損をしているときほどリスクを取りたがる、というわけです。

金融ショックが起きて手持ちの資産が含み損を抱えることになったとき、人は「投資で損した分は、投資で取り返してやろう」という気持ちがより強くなります。

こつこつとインデックス投資をしていたはずの人が、自分の負けているときはどういうわけかレバレッジをかけた信用取引にのめり込んでいったり、余計なスイングトレードに挑戦したりしてますます損失を増やしてしまう。

投資の鉄則は「余計なことはするな!」の一言に尽きます。

損を取り返そうと新しいトレードに挑戦しようとするときが、もっとも危ういのです。しかし損失回避性は人間に備わった心理特性ですから、理性でわかっていたとしてもこの衝動を抑えるのは難しいです。

リーマンショックと「アンカリング効果」の罠

今現在、かなり多くの投資家が「アンカリング効果」の罠に陥っています。

というのも、金融危機時に被る損失(リスク)を考えるときに、2008年のリーマンショックを基準としてしまっているからです。

リーマンショックを挟む2007年から2009年にかけて、S&P500の最大下落率は-56%を記録しました。

そのため米国インデックス投資家で「最悪でもマイナス50%程度の含み損に耐えられたら大丈夫」と考える人もいますが、これはあくまでリーマンショック時の記憶に引っ張られた(アンカリングされた)決めつけに過ぎず、ともすれば楽観的観測になり得ます。

なぜなら1929年の世界恐慌時には米国株式市場の最大下落率は-86%を記録したのですから。

もし今後、米国株式市場をリーマンショック時の記録(-56%)を超える暴落が襲ったとき、アンカリング効果によって自分のリスク許容度を甘く見積もっていた人たちはパニックに陥ることでしょう。

高配当株と「現在志向バイアス」

さて、金融危機で株式市場が暴落すれば、グロース株投資だろうとインデックス投資だろうと高配当株投資だろうと、大きな含み損を抱えるだろうことに変わりはありません。

しかしながら、含み損を抱えたときに受ける心理的ダメージを考えると、高配当株投資家が最も心理的苦痛から遠い場所にいます。

というのも、高配当株投資家はインカムゲインを得ることを心の拠り所としているからです。

遠い未来に成長株を売却して得られるキャピタルゲインよりも、目先に得られる配当金を重視する。

将来の利得(損失)よりも目の前の利得(損失)の方に価値を感じる人間の特性を「現在志向バイアス」と言います。

まとめると、高配当株ETFに投資する戦略は

「損失回避性」

→ 利得を得ているとき、人間はリスク回避型になる

→ 高配当ETF投資では確実な目に見える利得(分配金)が得られる

→ 暴落時の心理的な焦りによる投げ売りや余計なトレードをしづらい

 

「現在志向バイアス」

→ 将来の利得や損失よりも、目の前の利益を人間は過大評価する

→ 高配当ETF投資では、配当が出続ける限り心理的効用を得ることができる

→ 暴落時でも心理的ダメージを受けづらい

といった心理的優位性があるわけです。

高配当株といっても、個別株投資では企業の将来的なデフォルトリスクや減配リスクに対して判断を迫られる難しさがあります。

しかし、私の保有している HDV(iシェアーズ・コア米国高配当株ETF)であれば、そうした個別企業の投資判断をする必要なく、優良な高配当企業に投資できます。

少し長くなりましたが、投資において「人間の心理特性」は決して侮れない要素です。

自分は大丈夫と過信することなく、自分の弱さを認めた上で、個々人に合った投資スタイルを考えることが大切です。

それでは明日も頑張っていきましょう。たこたこ^~