エコノミック・モート企業への投資は市場平均に勝てるのだろうか

ほえほえ^~、どうも、ほえタコです。

ほえタコはポートフォリオの100%をHDV(iシェアーズコア米国高配当株ETF)で運用しています。

HDVはちょっと面白いETFで、構成銘柄の選定基準に「エコノミック・モート」(Economic Moat)なるものがあります。

エコノミック・モートとは、競合他社に対して優位に立てる経済上の堀(モート)を指します。もっと簡単に言えば、競争優位性です。

それでこのエコノミック・モートには明確な基準があるわけではなくて、モーニングスター社が独自の判断基準を用いて各企業を評価しています。

その判断基準としておそらく最もわかりやすいのが「ネットワーク効果」です。

例えばマイクロソフト(MSFT)はモーニングスター社のレーティングでは5段階評価のうち星4評価のワイドモート(広い堀)企業です。ワイドモートというのは、つまりは圧倒的競争優位性がある!と評価されているということです。

マイクロソフト社のソフトウェアであるWordとExcelは、まさに「ネットワーク効果」によりその価値を存続させていると言えます。原稿作成機能だけで言えば、Wordよりもジャストシステム社の《一太郎》の方がずっと高機能でいろいろなことができます。

しかし(同人小説書きを除く)ほとんどの人たちが一太郎ではなくてWordを選ぶのは「みんなが使っているから」です。職場でデーターをやり取りするとき、WordやExcelを使うのが標準となっています。

機能性云々以前に、みんなが使っているものを使うのが、もっとも便利である。より多くの人が使えば使うほど利便性が増す。人気者がますます人気者になるように、ネットワークのコアを獲得した製品は競合に対して圧倒的な優位に立つ。これがネットワーク効果です。

アドビ(ADBE)がCreative Cloudで個人デザイナーから月5千円もぼったくれるのも、IllustratorやPhotoshopが現場では圧倒的なシェアを獲得しており、これがないと仕事ができないからです。

ネットワークへの参加者が増えることによって、その製品の効用が増大する。ソフトウェア以外ですと、TwitterやFacebookなどのSNS、それからLINEなどのメッセンジャーアプリが典型例ですね。

LINEの後追いでいろんなメッセンジャーアプリが出てきていますが、結局はLINEの一強です。みんながすでにLINEを使っている(ネットワークが形成されている)からこそ、LINEに大きな価値が生まれ、その優位性は簡単なことでは決して揺らがないわけです。

世界最大のオークションサイトであるeBay(EBAY)を倒そうとアマゾンがオークション事業に進展し攻勢をかけた時期もありましたが、結局eBayには敵わず撤退しました。ネットワーク効果によって築かれた強固な顧客基盤は、アマゾンをも退けてしまうわけです。

まさに競合から自社を守る強固な《堀》であると言えます。

とはいえ国内最強のオークションサイトだったヤフオクが後発のメルカリにユーザーをかっさらわれた例を思えば、ネットワーク効果も無敵ではないようですね。

モーニングスター社の認める「エコノミック・モート」の銘柄一覧は、下記で公開されています。

Wide-Moat Focus Index
These Wide-Moat companies are trading at the lowest current market price/fair value ratios.

上ページのとおり“Morningstar Wide Moat Focus Index”なる指数があり、これに連動するETFとしてヴァンエック ベクトルMSワイドモートETF(MOAT) なるETFがあります。経費率は0.48%と高いですが、SBI証券に取り扱いがあります。

2019年1月時点の”Morningstar Wide Moat Focus Index”主要49銘柄をリストアップします。

ティッカー 銘柄名
SBUX Starbucks Corp
INTC Intel Corp
D Dominion Energy Inc
DIS Walt Disney Co/The
GIS General Mills Inc
MDT Medtronic Plc
CRM Salesforce.Com Inc
JLL Jones Lang Lasalle Inc
MCHP Microchip Technology Inc
MDLZ Mondelez International Inc
CMCSA Comcast Corp
KLAC Kla-Tencor Corp
WU Western Union Co/The
BLK Blackrock Inc
WFC Wells Fargo & Co
BIIB Biogen Inc
TROW T Rowe Price Group Inc
AMAT Applied Materials Inc
SCHW Charles Schwab Corp/The
GILD Gilead Sciences Inc
ABC Amerisourcebergen Corp
MCK Mckesson Corp
FB Facebook Inc
STT State Street Corp
ZBH Zimmer Biomet Holdings Inc
AMZN Amazon.Com Inc
CPB Campbell Soup Co
CAH Cardinal Health Inc
PM Philip Morris International Inc
AGN Allergan Plc
CMP Compass Minerals International Inc
MCD Mcdonald’s Corp
PG Procter & Gamble Co
HSY Hershey Co
PFE Pfizer Inc
PEP Pepsico Inc
CAT Caterpillar Inc
NOW Servicenow Inc
EMR Emerson Electric Co
BMY Bristol-Myers Squibb Co
EFX Equifax Inc
MSFT Microsoft Corp
BLKB Blackbaud Inc
K Kellogg Co
GWRE Guidewire Software Inc
PII Polaris Industries Inc
UTX United Technologies Corp
JW/A John Wiley & Sons Inc
GD General Dynamics Corp

表中で太字&黄色マーカーを引いた箇所が「HDVとの重複銘柄」です。

すなわち高配当かつ財務健全かつモーニングスター社の評価するワイド・モート企業であるということになります。

MOATとHDVの銘柄は意外と重複が少ないですね。

  • HDV = エコノミック・モート(経済上の堀)
  • MOAT = ワイド・モート(経済上の《広い》堀)

なのでおそらく《堀》の評価基準はMOATの方が厳しいのでしょう。

チャート:MOAT vs VOO – Yahoo Finance

MOAT(モーニングスターワイドモートETF)とS&P500の比較チャートです。

MOAT設定来(2012年)からの年間成長率は、配当金再投資を加味した場合でMOATが+12.38%、S&P500が+12.12%とほとんどパフォーマンスに差がありませんでした。

過去6年間の成績から導き出される残酷な結論としては

競争優位性を誇るワイドモート企業に厳選して投資をしても、市場平均(S&P500)に投資するのと大して差がつかない。

少なくとも過去6年間の短期間ではそうであった――、ということです。

ああ……これはアクティブファンドが市場平均に勝てないわけだわ……とちょっとため息をついてしまいたくなる結果です。

私はHDV(iシェアーズコア米国高配当株ETF)に全力投資をしているわけですが、HDVのスクリーニング基準である《エコノミック・モート》には過度な期待はしないようにしようと思いました。まあ安定して分配金を出し続けてくれさえすれば、それで満足です。

ちょっと話が脱線しすぎたのでこの辺で。

明日も頑張っていきましょう。たこたこ^~