ドルコスト平均法の良し悪しは心理的効用によって自己判断するしかない

ほえほえ^~、どうも、ほえタコです。

投資家にはさまざまなスタンスを持つ人がおり、それが投資ブログであればひとつの「派閥」のようなものが生まれます。

グロース派とバリュー派、米国株派と新興国株派、一括投資派と積立投資派。いろいろありますが、大切なのはどれが絶対的な正しさを持つかではなくて、個々人にとってどのスタンスがもっとも高い心理的効用を獲得し得るかです。

偉大なる児童文学であるミヒャエル・エンデの『モモ』は、経済合理的な選択が必ずしも人を幸せにはしないだろう真理を示唆します。

『モモ』の作中において街の人々は《時間資産》を効率的に運用しようとします。しかしその結果として人々は心のゆとりを失い、あくせくと働く忙しい生活を強いられるようになりました。

時間の効率運用により、人々の金融所得は激増したはずです。なのに幸福は、遠ざかってゆくばかりだったのです。

ドルコスト平均法にメリットはない

「ドルコスト平均法にメリットはなく、むしろデメリットしかない」とする言説があり、これは正しいといえば正しいです。

まず「ドルコスト平均法にリターンを押し上げる効果はない」ということは、難しい計算を使わなくともチャートを見れば直感的に理解できます。

図はS&P500に25,000ドルを《一括投資》した場合のパフォーマンスです。(配当金再投資込み、1994年1月~2018年12月)

投資金の25,000ドルは、18年12月時点で213,249ドルになっています。率にして853%です。

次に、S&P500に、25,000ドルを毎年1,000ドルずつに分けて、同期間の25年間《時間分散投資》した場合のパフォーマンスです。

累計投資金の25,000ドルは、18年12月時点で99,297ドルになっています。率にして397%です。一括投資の853%には大きく負けています。

シミュレートをかけずとも「長期的に右肩上がりなら、早い時期に一括投資した方が有利」なのは目に見えています。

たとえITバブル崩壊やリーマンショックを挟むとしても、株式投資の本質が「企業の成長、ひいては経済の発展」にあるのだとすれば、投資タイミングが早ければ早いほど良いのは決まっています。

そもそも「米国の長期的な経済成長が続く前提」がなければドルコスト平均法でS&P500を積み立てる根拠がなくなりますから、実際がどうなるかにせよ一括投資が合理的たる理由となります。

ちなみに、右肩上がりの米国株でなくとも「ドルコスト平均法より一括投資が有利」なのは実証されています。

コンピュータープログラムでランダムな株価を生成してシミュレーションをすると、

  • 標準偏差(リスク)を同程度にした場合、ドルコスト平均法よりも一括投資の方が期待収益率(リターン)は高い
  • 期待収益率(リターン)を同程度にした場合、ドルコスト平均法よりも一括投資の方が標準偏差(リスク)は低い

結果となります。何千回シミュレートしてもこうなります。

つまり一括投資はドルコスト平均法と比べて期待リターンが高いだけでなく、リスクも低いわけです。元本割れ確率も一括投資の方が低いと言えます。

なぜ一括投資にドルコスト平均法が劣ってしまうかというと、ドルコスト平均法には「機会損失」が発生するためです。

「一括投資 vs ドルコスト平均法」は机上の空論なのか

とはいえ、いくら「ドルコスト平均法より一括投資が有利」と言っても、それは机上の空論で終わる場合の方が多いです。

なぜならほとんどの人間は、生涯賃金を一括前払いで受け取ることはできないからです。

給料は毎月一定額振り込まれます。その給与をもとに投資をおこなえば、必然的にドルコスト平均法に近い形の投資となります。

選択肢があるとするならば「ボーナスが入ったらまとめて一括投資した方がいいな」と判断するくらいのものです。

一般的に「若いうちはリスク資産の割合を高めにして、年齢に応じてリスク資産の割合を下げていけばいいよ」という話がありますが、これは「若いうちにできる限りを一括投資しておきたい」をやんわりと言い換えた言葉に過ぎません。

毎月一定額の金銭収入しか持たない人が、将来の収入を見込んだ上で無理に一括投資しようとすると

  • 金融資産の割合を最大限に高める
  • レバレッジをかける
  • お金を借りて運用する

のどれか、あるいは複数の選択肢を選ぶことになります。

「奨学金でSPXL(S&P500ブル3倍ETF)を買う」みたいな人を以前見かけましたが、一括投資の優位性を思えばあながち間違った戦略とも言い切れません。

とはいえ、たとえそれが経済合理的な選択であったとしても、自分の生活スタイルを逸脱した投資、身の丈に合わない投資はいずれ破滅を呼びます。

人間の心は経済合理的にはできていないからです。

ドルコスト平均法の否定派が見落としていること

ドルコスト平均法を否定する人たちが見落としていることは、メンタルの強さは人によってさまざまであり、自分のメンタルで実行できる投資法が、他者にもできるとは限らない点です。

リターンの最大化は絶対的な正義ではありません。

たとえリターンを押し下げることになろうとも、生活スタイルに無理の生じない投資、心理的効用を最大化できる投資法を選ぶべきです。

ドルコスト平均法は、毎月定額の給与を受け取る我々にとって生活スタイルとの相性が良く、かつ(レバレッジをかけて一括投資するみたいのと比べると)心理的負担の少ない投資法です。

私はドルコスト平均法を否定する気には一切なれません。

ドルコスト平均法を馬鹿にする人たちに対して、私は(分かった分かった。そんなに言うなら言われたとおりにするので、手始めに生涯賃金を一括前払いで受け取る方法を教えてくださいな)くらいの感想しか抱かないです。

自分の投資法を否定するような言説を見かけるとムッとしたり、あるいは(私は間違っているのだろうか)と不安になったりすることはあると思います。

しかし私も含めて、投資家はみな自分のポジションを持っているわけですから、ポジショントークを話すしかありません。

リターンの最大化を神聖視しないこと。自分のメンタルに合った投資スタイルを選ぶことが私は大切だと考えています。

ドルコスト平均法はぜんぜん良いと思います。ただ「ドルコスト平均法は時間分散でリスクが下がるよー」といった説は嘘なので、そこだけは騙されないようにしましょう。

それでは明日も頑張っていきましょう。たこたこ^~