【書評】金融マーケット 勝つ法則(真壁昭夫・著)を読みました!

ほえほえ^~どうも、ほえタコです。

金融や経済が学べるお役立ち書籍を紹介するコーナーです。

今回、私が読んだのは『金融マーケット 勝つ法則 行動ファイナンスと相場格言で学ぶ投資の基本 (朝日新書) 』(真壁昭夫・著)です。

著者の真壁氏は信州大学で経済学を研究されていらっしゃる方で、専門は行動ファイナンス理論(行動経済学)だそうですね。

本書で書かれていることは要約するならば『投資ではメンタルが大切!』の一言に尽き、筆者の考え方とこのブログ(ほえタコの豆腐メンタル投資術)のスタンスはかなり近いです。

1.新書によくあるタイトル詐欺問題について

新書だと、本のタイトルは著者ではなく編集者サイドで決めるケースがわりと多いです。タイトルの良し悪しで売上が断然変わってきますから、商業本マーケティングのプロが書名を考えるわけですね。

しかしその弊害として、本のタイトルと内容が乖離するといったタイトル詐欺問題が往々にして発生します。

本書もその例に漏れず、「金融マーケット 勝つ法則」の題であるものの、金融マーケットに勝つ法則は一切出てきません。

それどころか筆者のスタンスは正反対で「金融マーケット(市場平均)に無理に勝とうとしないで、個人投資家は自分のメンタルを大切に負けない投資を心がけたほうが良いよ」というものです。

そもそも第一章のタイトルが『「勝つ」より「負けない」手法を選択すべし』ですから、本書の主旨は市場平均にアウトパフォームすることとはかけ離れています。

副題の『行動ファイナンスと相場格言で学ぶ投資の基本』の方が本書の内容をよく表しています。

悪い言い方をすれば「金融マーケット 勝つ法則」は盛大なタイトル詐欺ですから、そこは期待しない方が良いですね。

2.本書から学べること

投資には直接役立つものではないものの、行動ファイナンス理論の初歩的な話をざっくりと学ぶことができ、学問としては面白いなと感じます。

具体的に、

  • プロスペクト理論(価値関数と確率の重みづけ)
  • コミットメントと意思決定
  • ヒューリスティックの罠
  • 双曲割引
  • 制御幻想(コントロール・イリュージョン)
  • 代表性バイアス
  • 確証バイアス
  • 標準偏差と正規分布
  • 相関係数に着目した分散投資戦略
  • 心理勘定理論(心の会計)

このあたりの概念をいにしえの《相場格言》と織り交ぜて解説しているのが本書の特徴です。

上に列挙した言葉を聞いて「そんなのもう知ってるよー」という人であれば、本書から学ぶことはとくに無いかもしれません。逆に「なにそれ全然知らない」という人であれば行動ファイナンス理論の良き入り口になると思います。

例えば(本書にも出てきますが)プロスペクト理論の説明でよく出されるのが上のような図です。

トレードで10万円の含み益を得たときの喜びと、10万円の含み損を出したときの悲しみは、額は同じでも心理的効用は一致していません。体感的に分かるとおり、得る喜びよりも失う悲しみの方が圧倒的に大きいものです。

この心理的効用の非対称性が、投資における意思決定に大きな影響を及ぼします。

(A) +10万円の含み益を得たときに、利益確定をするか、それともさらに含み益が大きくなる方に賭けるか

(B) -10万円の含み損を抱えたときに、損切り(損失確定)をするか、それとも含み損が解消される可能性に賭けるか

上の二者択一問題では「現時点の評価額で確定するか、未来の利益に賭けるか」という同じ意思決定の問題であるにもかかわらず、(A)の含み益を得ているときには「利益確定」を、(B)の含み損を抱えているときには「含み損が解消されるまで待つ」を選ぶ人が多いです。

これは心理的効用において、10万円を手にする価値(図のオレンジ色矢印線の長さ)よりも、10万円を失わずに済ませる価値(図の水色矢印線の長さ)の方が大きいためです。

専門的な言葉を使えば「損失に対してはリスク選好型、利得に対してはリスク回避型になる」性質が人間にはあります。

もしこのような話に興味があるのであれば、本書は面白いと思います。

とはいえ行動経済学は、トレードや銘柄選定に直接役に立つようなものではありません。知識としては興味深いものの、本書が実際に投資をするときの役に立つかどうかは微妙なところではあります。

あと、本書はテーマがあちこちに飛んで、内容が中途半端な感じになってしまっているのがやや残念なところではあります。

よって、少し厳し目な評価とはなりますが、

『金融マーケット 勝つ法則』(真壁昭夫・著)

本書のおすすめ度:星3 ★★★☆☆ (正直なところ人を選ぶ)

とします。

以上、ほえタコの書評コーナーでした。

それでは明日も頑張っていきましょう。たこたこ^~