バックテストで投資対象の「未来」を占うことの危うさ

ほえほえ^~、どうも、ほえタコです。

米国株投資ブロガーのなかで、とりわけ人気の高いWebツールが「Portfolio Visualizer」です。

米国株・米国ETFの過去パフォーマンスを比較するツールとして非常に便利で、私もよく使っています。

バックテストは銘柄選定に大いに参考となる情報をもたらしてくれますが、ひとつ注意しなければならないのは、バックテストはあくまで過去のパフォーマンスを示すものであって、未来のリスクやリターンを占ってくれるものではないということです。

バックテストの結果「○○投資は△△投資と比べて優秀でした!」と述べることはできても、「これからも○○投資は△△投資をアウトパフォームし続けます!」とは言えません。

にもかかわらず、バックテストを占いツールとして過信するケースが、ちらほら散見されます。

少し極端な例を挙げてみましょう。

銘柄騰落率年平均成長率Best YearWorst Year
とあるETF1861.90%64.23%181.84%-15.51%
S&P500140.31%15.73%32.31%1.25%

上は2012年~2017年末までの「とあるETF」と「S&P500」のパフォーマンス比較です。

とあるETFはS&P500を圧倒的にアウトパフォームし、テンバガーを優に越える20倍バガー(?)を目前としています。

この、とあるETFは決して”バブル”によって値を上げているのではなく、長期的に取引値が右肩上がりとなるような仕組みを持っていました。

そのボラティリティ(価格変動幅)の大きさから、このETFがハイリスクな金融商品であることは多くの投資家が理解していたでしょう。

しかし年平均64.23%の成長率があり、最高年で181.84%の驚異的パフォーマンス。最悪年でもたった-15.51%の損失で済みましたから、分の良い宝くじとしては最高です。

国内証券会社でも間接的な形でこの金融商品に投資できたため、当時は国内投資家でも知る人ぞ知る、人気銘柄でした。

かくいう私も2017年の10月頃に、このETFへの投資を検討していました。

本ETFへの投資はそれなりに合理的に感じられ、それこそリーマンショックの再来でもない限り、長期的に大きな収益を得られることがバックテストの結果から期待できたからです。

で、そのわずか数ヶ月後にこうなりました。

2018年2月5日からのたった2日間で、このETFは -91.75%の大暴落を起こしました。

そう、かの有名なVIXショックです。

このETFの正体は、SVXY(ProShares Short VIX Short-Term Futures)

S&P500 VIX短期先物インデックスの逆エクスポージャー、すなわち恐怖指数を空売りするような性質を持ったETFです。VIX短期先物は平常な相場においてはコンタンゴによる減価特性を持ちますから、これを空売りすることは長期的にも勝率の高いトレードとなります。

S&P500の堅調な右肩上がり相場の恩恵を最大限に享受するには、SVXYはまさにうってつけでした。

そこに、青天の霹靂のようなVIXショックが訪れます。

SVXYへはGMOクリック証券のCFDを通じて投資できますが、当時レバレッジをかけて買っていた投資家は一撃ロスカット。

国内証券会社では「NEXT NOTES S&P500 VIXインバースETN(VIXベア:2049)」という上場ETNを通じて投資できましたが、早期償還となり、強制決済により損失を確定させられることとなります。

このような大暴落が起こるであろう未来は、ETF設定来期間のバックテストでは占えなかったことです。

私がSPXL(Direxion デイリーS&P500ブル3倍 ETF)TECL(Direxionデイリーテック株ブル3倍ETF)といった、最近大流行しているレバレッジETFへの投資を(否定はしないまでも)一般におすすめはできないと感じているのは、このVIXショックをリアルタイムで目撃してしまった影響も無くはないです。

SPXLやTECLのバックテストで得られるのは、それらにとって「非常に都合の良い期間」のパフォーマンスであるため、それがとても画期的で、素晴らしい金融商品であるかのような感覚に囚われます。

しかしSPXLやTECLと同じ仕組みでレバレッジをかけているETFの最大下落率として

  • NUGT(Direxion デイリー 金鉱株 ブル3倍 ETF):-99.91%
  • LABU(Direxion デイリー バイオテック株 ブル3倍 ETF):-72.13%
  • ERX(Direxionデイリーエネルギー株ブル3倍ETF):-90.28% 
  • YINN(Direxion デイリー 中国株 ブル3倍 ETF):-83.22%

などなどの過去事例があることは、自身のリスク許容度を再確認する上でも知っておいた方が良いでしょう。

もちろん、これらの暴落事例を根拠にSPXLやTECLが同じように暴落すると述べるつもりは一切ありません。それもまた、バックテストによる「占い」と同じことだからです。

次はもう少し極端ではない例を見てみましょう。

1998年から2008年までの10年間における、とある株式市場のインデックスを比較したものとなります。もっとも、期間の切り取り方はかなり悪意のあるものですが……。

銘柄騰落率年平均成長率Best YearWorst Year最大下落率シャープレシオソルティノレシオ
A市場平均306.58%15.06%61.57%-27.56%-43.96%0.560.83
B市場平均83.31%6.25%15.19%-20.96%-44.11%0.240.34

過去10年間でA市場平均はトリプルバガーを達成し、年平均成長率は15.06%とB市場平均を大幅にアウトパフォームしています。

投資の効率性を測る指標であるシャープ・レシオで見ても、リスク調整後リターンを測る指標であるソルティノ・レシオで見ても、B市場平均よりもA市場平均の方が優れていることがよく分かります。

私もこのバックテストの結果だけを見ると、A市場平均の方に投資したいと感じます。

回答を述べてしまうと、

  • A市場平均 = 新興国株式市場
  • B市場平均 = 米国株式市場

です。

リーマンショック後の10年間において新興国株式市場は低迷し、米国株式市場は右肩上がりの成長を遂げることは、米国株投資家ならばよく知るところと思います。

この未来も当時のバックテストでは読めませんでした。

加えて、新興国株が好調な時期は「新興国株が米国株をアウトパフォームできる理由」がもっともらしく語られます。

例えば、

「新興国のなかでも急成長しているBRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)の時価総額を合計しても世界市場のたった4%程度に過ぎず、今後中国やインドが世界の覇権を握ることを考えれば、まだまだ新興国株式市場には大きな上昇余地がある。バブルにさえなっていないし、バブルになれば見える景色は青天井だろう」

だとか

「経済成長の見込めない先進国への投資が、新興国株への投資よりもリターンが低くなるのは当然。先進国に投資しているやつは未来の読めないクソ雑魚投資家」

だとか

「米国経済はハリケーン《カトリーナ》による打撃をうけており、そこに原油価格高騰の負担がのしかかる。ベビーブーム世代が大量退職する年が重なり、米国の社会保障財政はさらなる圧迫を受ける。経常収支赤字の拡大はこれ以上持続できない。米国経済は崩壊を迎えるだろう。

今後の人口動態を考えても、米国株ではなく新興国株に投資した方が良い結果が得られるのは自明と言える」

みたいな、「米国株よりも新興国株のほうが優れている根拠」として何となくもっともらしい意見が、おそらく2006年当時にツイッターが存在したとすれば溢れかえっていたことでしょう。

それは例えば、2020年のこの時期では正反対に「新興国・先進国株よりも米国株への投資が優れている根拠」として、さまざまな意見が溢れていることと同じです。

米国企業の積極的な株主還元姿勢・FANGを筆頭とする巨大ハイテク企業の「創造的破壊」・産業革命・イノベーション・人口推移・政策・成長力・グローバル化世界における優位性……etc

いくらでも理由は見つかります。

その理由は長期投資の判断をする際に、もちろん大切にしなければならないものですが、

「○○投資よりも△△投資の方が優れている!」の根拠にバックテストの結果を持ち出すのは、少々危ういかなと感じる次第です。

バックテストは過去の結果に過ぎず、その投資商品の《傾向や性質》はある程度掴めるかもしれません。しかし未来予知の根拠にはなり得ないからです。

もしもバックテストのみを拠り所に投資対象を決定する場合、それは「右肩上がりの強いチャートだからトレンドフォローで買いだ!」と判断するテクニカルトレードと大差ありません。

右肩上がりの前提が崩れれば売却判断をしなければならず、少なくとも《長期投資》をおこなうのは心理的に難しいでしょう。

なお、私はHDV(iシェアーズコア米国高配当株ETF)という米国高配当株ETFをポートフォリオのコアとして運用しています。

HDVはどの期間で切り取っても、他の米国株ETFと比べて「標準偏差が小さい」のが特徴です。

しかしそのバックテストの結果を根拠に、「HDVは他のETFよりもリスクが小さい!」または「下落耐性がある!」と言うことはできません。

なぜなら、HDVは銘柄入れ替え頻度が高く、上位構成銘柄がコロコロと入れ替わる上に、上位セクターの割合変動も大きいです。

構成銘柄の中身が頻繁に入れ替わるので、過去のボラティリティの低さは将来のボラティリティの低さを保証しませんし、原油価格の大暴落が起きれば現在の構成銘柄ではHDVも暴落を免れるのは難しそうです。

このように、本当の意味で銘柄保有の心理的リスクを抑えるためには、投資対象のことをよく知っておく必要があります。

米国株投資は今非常に人気のあるトレンドですが、自分が「米国企業」に投資したいと考えるのか、それとも「右肩上がりのチャート」や「過去の輝かしいパフォーマンス」に投資したいと考えるのか、将来のブラック・スワンに動揺して不本意な売買をしてしまわないために今一度確認しておきたいです。

それでは明日も頑張っていきましょう。たこたこ^~